積読消化:「The DevOps ハンドブック」
イントロダクション
第1部 3つの道
- 第2部 スタートのための糸口
- 第3部 第1の道:フロー改善の技術的実践
- 第4部 第2の道:フィードバックの術的実践
- 第5部 第3の道:持続的な学習と実験の技術的実践
- 第6部 情報セキュリティ、変更管理、コンプライアンスを統合するための技術的実践
第5部から読んでいく。
第5部📝
継続的な学習
実験の技術的実践
できる限りスピーディかつ頻繁に低コストで学習する機会を創り出す実践を説明する。
- 安全を実現するジャストカルチャー(公正な文化)を確立する
- 本番環境にエラーを注入してシステムの回復力を鍛える
- ローカルな発見をグローバルな改善につなげる
- 組織的な改善と学習のための時間を確保する
Ch19 日常業務での学習の実現と日常業務への学習の注入
複雑なシステムのなかで安全に仕事を進めるためには、自己診断と自己改善の能力を引き上げなければならない。
- NetflixのChaos Monkeyの取り組み事例
この章では、このような学習システムの作り方とジャストカルチャーを確立する方法、学習を加速させるために日常的にエラーのリハーサルを行い、意図的にエラーを引き起こす方法を探求していく。
- 公正なラーニングカルチャーを確立する
ラーニングカルチャー(学習する文化)を築くためにあらかじめ必要とされる要件の1つは、事故が起きたとき(事故は必然的に起きる)に、その対処方法が「ジャスト」(公正)に見えるようにすることである。
- 腐ったりんご理論の誤り
私たちが目標とすべきは、組織的学習の機会を最大限に増やし、日常業務に潜む問題を暴いて広く共有する行動を評価する場を形成することである。そうでなければ、私たちが動かされているシステムの品質と安全性を向上させ、そのシステムのなかで仕事をしているすべての人々の間の関係を強化することできない。
情報を知識に転化させ、システムにその学習結果を組み込むことが、安全性と説明責任のバランスをとってジャストカルチャーの目標を達成するための第一歩になる。
学習を基礎に置くジャストカルチャーを作るためには、避難なしのポストモーテムと管理された形での本番環境への障害の注入という2つの実践が効果的である。複雑なシステムでは避けがたく起きる問題への対処方法を練習する機会を作るのである。
- 事故が起きたあとに非難なしのポストモーテムを開く
事態を解決したあとで非難なしのポストモーテム(blameless post-mortem)を開くべきである。このblameless post-mortemという用語はJohn Allspawが作ったもので、「障害のメカニズムの状況的な側面と障害につながった個々人の意思決定プロセスに光を当てる形で誤りを」検証することを表す。
事故発生後できる限り早い時期、記憶が失われ、因果関係のつながりが見えなくなったり、状況が変化したりする前に、ポストモーテムを開くようにする(もちろん、まだ問題解決のために走り回っている人々の邪魔にならなように、問題が解決するのを待ってからである)。
- 非難なしのポストモーテムですること
- 誤りを犯した人を罰しないようにしながら、さまざまな視点から障害の詳細な事実を集めてタイムラインを描く
- 自分が障害の発生にどのように関わったかについて詳細に説明できる場を設けて、すべてのエンジニアに安全性向上のための意欲を与える
- 将来同じ過ちを繰り返さないための方法を社内のほかの人々に教えるエキスパートになるように、誤りを犯した人々を励ます
- 人にはアクションを起こすか否かを判断する裁量の余地がかならずあり、その判断のよしあしの判定はあと知恵だということを認める
- 将来、同じような事故が起きないようにするための対応策を提案し、期限とフォローアップ責任者を決めてその対応策の実施記録をかならず作る
- 非難なしのポストモーテムに参加してもらうステークホルダー
- 問題発生につながったかもしれない判断を下した人々
- 問題を見つけた人々
- 問題に対処した人々
- 問題を診断した人々
- 問題の影響を受けた人々
- その他会議に出席したいと思っているすべての人々
まとめ
組織的な学習を実現する基礎となるジャストカルチャーを作るためには、いわゆる失敗、障害、エラーの意味を捉え直さなければならない。複雑なシステムでは避けがたいエラーは、適切に扱えばダイナミックな学習環境を作り出せる。それは、すべてのステークホルダーが安心して見たことを証言し、アイデアを提出できる環境であり、グループが期待外れになったプロジェクトを早期に立て直せる環境である。 非難なしのポストモーテムと本番環境へのエラーの注入は、どちらも障害を浮上させ、障害から学ぶことに慣れ、そうすることに責任を感じるような文化を築き上げる。事故の数が十分に減ったときには、許容範囲を狭めて学習を続けるようにすべきだ。Peter Sengeが言っているように、「唯一の持続可能な競争優位は、競合他社よりも早く学べる能力だ」